月に魔法をかけられて
ガチャリ──。

ドアが開き、瞳子さんと一緒に副社長が入ってきた。
2人の登場にどうしていいかわからず、私はまた固まってしまう。

瞳子さんのお家なのに副社長が来て大丈夫なのかな?
旦那さんに見つからないの?

いろんな思いを巡らせながら2人の顔を交互に見る。

「啓太、お姉ちゃんは今疲れてるの。だからママのところにおいで」

瞳子さんが啓太くんに声をかけるけれど、啓太くんは『いやだ』と言って私にくっついたまま離れない。

「啓太、そんなにお姉ちゃんにくっつくと、壮真が怒っちゃうよ。早くママのところにおいで」

「やだ。ぼくはみづきといっしょにいるー」

今度は私の膝の上にまたがり、抱き着いてくる。

そんな啓太くんの姿を見て瞳子さんが笑い始めた。

「壮真、ここにも強力なライバルがいたわね。2人して同じ顔して……」

瞳子さんはツボにはまったのか口元を押さえて大笑いしている。

副社長はというと、なんだかとても機嫌が悪そうな顔をしていて──。

「啓太、早くこっちにこい」

副社長が声をかけるものの、啓太くんは私の胸元で顔を埋めながら、パジャマをギュッと握り締めている。
副社長はそんな啓太くんを見ながら、諦めるように小さく息を吐いた。
< 207 / 347 >

この作品をシェア

pagetop