月に魔法をかけられて
ドックン──と心臓が大きく飛び跳ねる。
ポケットの中で絡まった手が急速に熱を帯びてきて、瞬く間に鼓動がドキドキドキドキと加速し始めた。

まるで傍から見たら恋人同士のような状態に、私はどうしていいのかわからず、神社までの道のりを副社長に寄り添いながら歩いて行った。

歩いている間、どうしてもポケットの中の絡まった手に意識が集中してしまい、無言になってしまう。
私は必死に何か話題になるものはないかと考えて、副社長に話しかけた。

「そ、空にいっぱい……ほ、星が出てますね……。明日……あっ、もう今日ですけど……。朝は晴れそうですね……」

なんとか話しかけたものの、緊張のあまり声が裏返り、片言の日本語のようなぎこちない会話しかできない自分に、恥ずかしすぎて落ち込んでしまう。
そんな緊張している私を笑うことなく、副社長が空を見上げながら答えてくれた。

「久しぶりにこんな夜中に外を歩いたよ」

「わ……私もです……。それに……私、夜に初詣に行くなんて初めてで……」

「俺はここ数年は海外にいたから初詣なんて行ってないな。初詣自体が久しぶりだな」

無言にならないよう、どうにか会話を成り立たせながら歩いていると、段々と神社に近づいてきたのか人がとても増えてきた。
< 233 / 347 >

この作品をシェア

pagetop