月に魔法をかけられて
目を開いて丁寧に一礼をしたあと副社長を見ると、副社長は既に参拝を終えて私の方をじっと見ていた。

「美月、願いごとした?」

「はい」

こくんと頷いた私を見て口元を緩めると、そのまま私の手を握り、おみくじが置いてある場所へと移動した。

「じゃあ、おみくじを引くか?」

「はい」

賽銭箱にお金を入れ、おみくじが入っている箱の中に手を入れる。グルグルとかき回したあと、その中の一枚を掴んで取り出した。

副社長も同じようにおみくじを一枚持っている。
ドキドキしながらゆっくりとおみくじを開くと──。

「わあっ! やったー。大吉だー!」

大きく『大吉』と書かれた文字が目に入り、思わず頬が緩む。大吉自体もうれしかったけれど、私はその中の『願望』と『待ち人』の欄に目が釘付けになった。

【願 望】思わず早く叶う
【待ち人】来ます

たった一枚のおみくじだけど、叶うかどうかなんてわからないけれど、神様が私の願いを聞いてくれたようで自然と笑みがこぼれた。
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