月に魔法をかけられて
「お出汁のいい匂い……。瞳子さん、私も何か手伝います」
キッチンに行き、何か手伝うことはないかと瞳子さんの様子を窺う。
「大丈夫よ、お正月なんだから。美月ちゃんゆっくりしてて。あっ、そう言えば昨日、初詣に行ったんでしょ? どうだった?」
手を動かしながらニヤッとうれしそうな顔を私に向ける。
「あっ……すごく人が多かったです……」
「そうなんだ。夜中でもそんなに初詣に行く人がいるんだね」
今度はまな板の上でトントントントンと、リズムよく長ねぎが切られ始めた。
「参拝するまで結構時間がかかって……。夜中にこんなに初詣に来る人がいるって私もびっくりしました」
「ほんとよねぇ。そう言えば壮真も初詣なんて久しぶりじゃなかったのかしら。あの子、ここ数年は海外でお正月を過ごしていたから……」
「そう……みたいです。初詣自体が久しぶりだとおっしゃってました」
「そうよね。美月ちゃんと一緒に行けて壮真もうれしかったんじゃない? 初詣と言えばデートの定番だからね!」
まるで自分のことのように顔を輝かせながら、私に満面の笑顔を送る。その笑顔から瞳子さんはまだなぜか副社長が私のことを好きだと勘違いしているようだった。
私は心を落ち着かせるように小さく息を吐くと、キッチンを挟んで瞳子さんの正面に立った。
「と、瞳子さん……実はお話があって……」
言いづらくて、つい視線を下に落としてしまう。
瞳子さんは「なになに?」と嬉しそうに私を見つめた。
「あの……今日でお家に帰ろうかと思います……。長い間お世話になりましてありがとうございました」
ギュッと目を瞑ってゆっくりと頭を下げる。
「えっ……?」
驚いた声をあげた瞳子さんは一瞬絶句したあと、かまぼこを切っていた手を止めて、包丁をまな板の上に置いた。
ゴクッと唾を飲み込む音が聞こえる。
「美月ちゃん、急にどうしたの? えっ、どうして? もしかして昨日壮真と何かあった?」
瞳子さんの顔からさっきまでの笑顔がパッと消えて、心配そうな表情に変わった。
キッチンに行き、何か手伝うことはないかと瞳子さんの様子を窺う。
「大丈夫よ、お正月なんだから。美月ちゃんゆっくりしてて。あっ、そう言えば昨日、初詣に行ったんでしょ? どうだった?」
手を動かしながらニヤッとうれしそうな顔を私に向ける。
「あっ……すごく人が多かったです……」
「そうなんだ。夜中でもそんなに初詣に行く人がいるんだね」
今度はまな板の上でトントントントンと、リズムよく長ねぎが切られ始めた。
「参拝するまで結構時間がかかって……。夜中にこんなに初詣に来る人がいるって私もびっくりしました」
「ほんとよねぇ。そう言えば壮真も初詣なんて久しぶりじゃなかったのかしら。あの子、ここ数年は海外でお正月を過ごしていたから……」
「そう……みたいです。初詣自体が久しぶりだとおっしゃってました」
「そうよね。美月ちゃんと一緒に行けて壮真もうれしかったんじゃない? 初詣と言えばデートの定番だからね!」
まるで自分のことのように顔を輝かせながら、私に満面の笑顔を送る。その笑顔から瞳子さんはまだなぜか副社長が私のことを好きだと勘違いしているようだった。
私は心を落ち着かせるように小さく息を吐くと、キッチンを挟んで瞳子さんの正面に立った。
「と、瞳子さん……実はお話があって……」
言いづらくて、つい視線を下に落としてしまう。
瞳子さんは「なになに?」と嬉しそうに私を見つめた。
「あの……今日でお家に帰ろうかと思います……。長い間お世話になりましてありがとうございました」
ギュッと目を瞑ってゆっくりと頭を下げる。
「えっ……?」
驚いた声をあげた瞳子さんは一瞬絶句したあと、かまぼこを切っていた手を止めて、包丁をまな板の上に置いた。
ゴクッと唾を飲み込む音が聞こえる。
「美月ちゃん、急にどうしたの? えっ、どうして? もしかして昨日壮真と何かあった?」
瞳子さんの顔からさっきまでの笑顔がパッと消えて、心配そうな表情に変わった。