月に魔法をかけられて
「そんなことできません……。壮真さんに迷惑がかかるし……、それよりなにより、会社が始まるのに一緒に生活するなんて……」

「迷惑? 俺はひとりで美月が生活する方が迷惑なんだけど……。毎日毎日心配しないといけないし、心配しすぎて夜も眠れなくなる。そうすると仕事にも支障がでてくる。美月の安全が毎日目の前で確認できれば、それに越したことはないだろ?」

「た、確かにそうですけど……。でも………」

「秘書は俺のサポートするのが仕事だよな? そんな俺が心配から仕事に支障をきたすようになったらどうする? 俺の体調にもかかわるよな?」

「そ、そんな………」

「何? 何か不満がある?」

「不満とかじゃなくて……」

「まあ、一緒に暮らしたからって、そんなにすぐには手を出さないから安心しろ」

「そ、そんなこと言ってるんじゃ………」

「じゃあ、さっそく今日帰ってから、さっきの続きをするか?」

ニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべながら、私の反応を見て楽しんでいる。

「もう、壮真さん!」

頬を膨らませながら手をあげた瞬間、その手を掴まれ、引き寄せられた。

そのまま腕の中に包みこまれる。

「美月、本当に心配なんだ。だから……、犯人が捕まるまででいいから、俺の家で生活してほしい。な、頼む……」

懇願するような切ない声に、私は断ることもできず小さく頷いた。
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