月に魔法をかけられて
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「ただいまー!」

夕方6時を過ぎたころ、瞳子さんたちが帰ってきた。

「えっ? 夕飯食って帰って来るんじゃなかった?」

「そうなんだけどね、啓太が寝ちゃって……。だから帰ってきちゃった。ごめん、もしかして早すぎた?」

瞳子さんが副社長と私を交互に見ながら、含み笑いを浮かべる。直人さんは「啓太を寝かしてくる」と言って、抱いていた啓太くんと一緒にリビングから出て行った。

「別に早くねぇし。逆に早く帰って来てくれて助かったよ。俺たちそろそろ帰ろうと思って」

「俺たち?」

目を丸くしながら首を傾げる瞳子さん。

「ああ、犯人が捕まるまで心配だから、美月は俺の家で生活することにした」

「えっ? 壮真の家? ということは……壮真、やっと美月ちゃんに言ったのね!」

嬉しそうな顔をしてパチンと手をたたく。
その合わせた手を胸の前で組みながら、今度は私の方を向いた。

「美月ちゃん、私もその方がいいと思う。ここにいないなら壮真の家で生活した方がいいわ。あー、よかった。安心したわ」

「瞳子さん……」

全部わかっているから大丈夫と瞳の奥で訴えてくる瞳子さんに、恥ずかしくて目を合わせることができず、顔に熱を放ちながら俯いてしまう。そんな私を瞳子さんが「よかった。よかった」と言いながら優しく抱きしめてくれた。
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