月に魔法をかけられて
いつの間にか車が地下の駐車場へと入っていき、一番奥の空いていたスペースに停まった。車から降りてトランクからスーツケースを取り出し、エレベーターへと向かう。エレベーターに乗り込むと、副社長は4階のボタンを押した。

あれ……? 4階?

前に来たときには気づかなかったけれど、エレベーターのボタンが4階までしかないことに少し驚いてしまった。セキュリティーがとてもしっかりしていて、エレベーターも3基ほどあったから、てっきりタワーマンションかと思っていたからだ。

ホテルのように、低層階と高層階で階数によって分かれているエレベーターなのだろうか?
エレベーターの中を見渡してみるけれど、そんなことは何ひとつ書いていない。

「美月、どうした?」

私の表情に副社長が顔を覗きこむように尋ねた。

「あっ、いえ……。どのエレベーターに乗ったらいいのかなと思って……」

「んっ? どのエレベーター?」

「はい。3基もあったから迷わないようにしないとと思って……」

副社長は目尻を下げてクスッと笑みをこぼした。
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