月に魔法をかけられて
この判断、正しかったんだよね?

副社長を部屋に連れてきたものの、果たしてこの判断が本当に良かったのかどうか不安になる。

もし警察に連れていかれたり、週刊誌のネタになったりしたら、副社長の進退にも関わるかもしれないもんね。
うん。これで良かったんだよ……。

私は納得させるように、何度も自分にそう言い聞かせていた。

それより私はこれからどうしたらいい?
副社長と一緒にここで寝るわけにもいかないし、帰るって言ってももう終電ないよね?
こんな時間にタクシーに乗って帰るのも怖いし……。

副社長に視線を向けると、全く起きる気配なんてさらさらなく、整った顔をして眠っている。

イケメンって寝てる姿もイケメンなんだね。

会社では決して見ることのできない無防備に寝ている姿を見て、なんだか可笑しくなり、クスリと笑みがこぼれた。

それにしてもよっぽど疲れてるんだろうな。
さっき、今日の会食は長かったって言ってたけど、相手は誰だっけ?

あっ、フジモリビューティーの社長だ!
副社長、あの女社長につかまってたんだ。
そりゃあ、会食時間が長引くよね……。

イケメン大好きで、胸を強調する露出度の高い服を着て、フェロモン満載のグイグイくるあの女性社長を思い出して、私は副社長に憐憫の眼差しを送った。
< 27 / 347 >

この作品をシェア

pagetop