月に魔法をかけられて
ゆっくりとお湯に浸かり、髪の毛を乾かしてリビングへと戻ると、副社長はソファーに座ってテレビを見ていた。

「すみません……。遅くなりました」

「疲れとれた?」

副社長が振り返りながら私の姿を見たあと、そのまま無言になった。

んっ? なんかおかしい……?

鏡できちんと確認して出てきたから、下着は透けてはいないはずだ。いつもはノーブラだけど、今日は寝る前に外そうと、ブラもつけてパジャマを着ている。
あまりにも何も言わない副社長に恐る恐る声をかけた。

「あの……おかしいですか?」

不安な顔で副社長を見つめる。

「あ、いや……。そ、それってパジャマ?」

副社長が私のモコモコのワンピースのルームウェアを指さした。

そう言えば瞳子さんの家でもこれを着ていたけれど、お風呂から出たらすぐに自分の部屋へと戻っていたから、副社長がこの姿を見るのは初めてだった。

「はい。パジャマです。いつもこれで寝てて……。変ですか?」

「いや……反則だろ……。そんな可愛いパジャマで現れるなんて……」

「はい?」

「いや、いい……。俺も風呂に入ってくるわ」

副社長はそう告げるとすぐにバスルームへと入っていった。
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