月に魔法をかけられて
聡さんが帰った後も副社長は言葉少なく、「悪いけど先に風呂に入ってくる」と言ってリビングから出ていってしまった。そんな素っ気なく、感情を表に出さなくなった副社長の様子に、急に不安が襲ってきた。
とにかく早く事件を終わらせることばかり考えていた私は、あんなに心配してくれていた副社長の気持ちなんて聞くこともせず、自分だけの判断でこの事件を終わらせてしまった。
自分の中で勝手に副社長の気持ちを想像して、副社長もつらいはずだと思い込み、もっと副社長の意見を聞くべきではなかったのかと後悔が押し寄せてくる。
その一方で、世間に犯人が武田絵奈だと漏れてしまい、会社に迷惑をかけることになっていたらと思うと、やっぱりこの決断で良かったのだと、強引に納得しようとしている私もいた。
今は苦しいけれど、いつかこの決断は正しかった、このとき早く事件を終わらせておいて良かったと思える日がきっとくるはずだ。私は何度もそう自分に言い聞かせると、冷え切ったマグカップを洗い始めた。
副社長がバスルームから出てきて、髪の毛をタオルで拭きながらソファーに座った。バスルームから出てきたあとも、ひとことも口にすることなく、難しい顔をしてタオルをゴシゴシと動かしている。
「壮真さん、私もお風呂に入ってきますね」
私は副社長の背中に声をかけると、返事を聞くことなく、そっとリビングをあとにした。
バスルームに入り、いろんな思いを洗い流すように熱めのシャワーを頭から浴びる。しばらくそのままの状態でいると、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
気持ちが落ち着いたところで、身体と髪の毛を洗い、ゆっくりとバスタブに浸かる。温かいお湯に包まれながら、もう一度すべてのことを確認するべく目を閉じた。
事件のこと、聡さんの話、副社長の気持ち、自分の決断をひとつひとつ自分に問いかけながら答えを出していく。
そして再び目を開けると静かに息を吐いた。
きっと大丈夫。
副社長もわかってくれるはず……。
私はバスタブから出て、もう一度熱いシャワーを身体に浴びると、パジャマに着替えてリビングへと戻っていった。
とにかく早く事件を終わらせることばかり考えていた私は、あんなに心配してくれていた副社長の気持ちなんて聞くこともせず、自分だけの判断でこの事件を終わらせてしまった。
自分の中で勝手に副社長の気持ちを想像して、副社長もつらいはずだと思い込み、もっと副社長の意見を聞くべきではなかったのかと後悔が押し寄せてくる。
その一方で、世間に犯人が武田絵奈だと漏れてしまい、会社に迷惑をかけることになっていたらと思うと、やっぱりこの決断で良かったのだと、強引に納得しようとしている私もいた。
今は苦しいけれど、いつかこの決断は正しかった、このとき早く事件を終わらせておいて良かったと思える日がきっとくるはずだ。私は何度もそう自分に言い聞かせると、冷え切ったマグカップを洗い始めた。
副社長がバスルームから出てきて、髪の毛をタオルで拭きながらソファーに座った。バスルームから出てきたあとも、ひとことも口にすることなく、難しい顔をしてタオルをゴシゴシと動かしている。
「壮真さん、私もお風呂に入ってきますね」
私は副社長の背中に声をかけると、返事を聞くことなく、そっとリビングをあとにした。
バスルームに入り、いろんな思いを洗い流すように熱めのシャワーを頭から浴びる。しばらくそのままの状態でいると、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
気持ちが落ち着いたところで、身体と髪の毛を洗い、ゆっくりとバスタブに浸かる。温かいお湯に包まれながら、もう一度すべてのことを確認するべく目を閉じた。
事件のこと、聡さんの話、副社長の気持ち、自分の決断をひとつひとつ自分に問いかけながら答えを出していく。
そして再び目を開けると静かに息を吐いた。
きっと大丈夫。
副社長もわかってくれるはず……。
私はバスタブから出て、もう一度熱いシャワーを身体に浴びると、パジャマに着替えてリビングへと戻っていった。