月に魔法をかけられて
「美月ごめんな。相当疲れてるよな。このまま寝てていいから」

守られているような腕の中が心地よくて、安心感に包まれる。

「俺が毎晩美月を抱いてたから眠いよな……。俺、病気なのかな? ずっと美月に触れていたくてたまらないんだよな」

起き抜けに、顔が真っ赤になるような恥ずかしいセリフとさらりと言う。

うれしくて胸がきゅっと締めつけられてしまう。

こんなに好きになってもらえて、私はなんて幸せなんだろう。

だけどその一方で、今まで感じたことのない嫉妬とも不安とも思える気持ちが芽生え始めていた。

段々と目が開いてきた私は、その気持ちを抑えることができず、恐る恐る口に出してみた。

「ねぇ、壮真さん……」

「んっ? どうした美月?」

「あの……、最初からこんなにいっぱいしてたら……、その……、飽きるんじゃ……ないのかな………?」

「飽きる?」

「えっと……、あの、私の身体に飽きて……、他の人としたくなって……、その人のことが好きになっちゃうとか……。そしたら私……、すごく嫌……」

不安な瞳で見つめる私に、副社長はぎゅうぅっと私を抱き締めた。

「俺が美月に飽きるわけないだろ! たとえ少し落ち着いて、毎晩が一日置きになったとしても、俺が美月に飽きるなんて絶対にねぇよ。そんな心配より、俺の方が嫌われそうだよ。こんなに毎晩してたら、美月の方が逆に嫌がって出ていくかもしれないだろ?」

本気とも冗談とも取れる表情に、私は顔を伸ばして首筋にそっとキスをした。

「私はずっと壮真さんがいい……。壮真さんだけがいい……。壮真さんだけに触られたいし、壮真さんだったら毎日でもいい。何をされてもいいから、お願いだから、いっぱいしても私に飽きないで……。お願い……」

懇願するように瞳を見つめる。

普通なら重くて面倒な女性だと思われるようなお願いなのに、副社長は甘く掠れた声で名前を呼んだ。

「美月……、そんなこと言われたら、もう手加減もできなくなるぞ……」

「それでもいい……」

「美月、愛してる……」

私はまた副社長に唇を塞がれたまま、快感の中へと導かれていた。
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