月に魔法をかけられて
「美月、それって俺と結婚してくれるって受け取ってもいいのか?」

柔らかな低い声とともに、真っ直ぐな瞳を私に向ける。

ドックン──。

心臓が大きく飛び跳ねた。

いつになく真剣な表情で真っ直ぐに見つめられるその視線に、1ミリも逸らすことができずに瞳を揺らしていると、副社長が跪いて私の両手を優しく握った。


「美月、俺と結婚してください。俺は一生美月のそばにいたいと思っています。美月にも一生俺のそばにいてほしいです。美月と一緒に家族を作っていきたいです」


(えっ……、うそっ…………)

じわじわと視界が歪み始め、副社長の顔が段々とぼやけてくる。

突然すぎる言葉に、うれしすぎて涙がぽろぽろと溢れてきた。

「美月……? 返事を聞かせてくれる?」


柔らかい瞳で穏やかな微笑みを向ける副社長に、ますます涙が溢れ、幸せな気持ちに包まれながら、私は返事をした。

「はい……。よろしく……お願いします………」

その瞬間、副社長はクシャっと笑顔になり、再び私を抱き締めた。

「美月、ありがとう。ありがとな」

抱き締める腕が、声が震えている。

「それとごめんな。本当はオシャレなレストランでプロポーズしようって思ってたのに、さっきの美月の言葉を聞いたらもう我慢できなくなって……。女性はプロポーズの場所や言葉を大切にするだろ? この部屋の中じゃ、全然うれしくないよな……」

少し落胆したような副社長の声に、私は首を左右に振った。

「場所や言葉って大切かもしれないけど、好きな人からプロポーズされるなら私はどこだってうれしいです。だって、これから大好きな人とずっと一緒にいれるんだもん……」

「美月……」

名前を呼ばれるとともに、唇が重ねられた。

いつもより激しいキスに身体の力が抜けそうになる。

たっぷりと激しいキスを堪能したあと、副社長は私を見つめた。

「美月、今すぐ美月のこと抱きたい」

ひとつしか選択肢はないと感じてしまうほどの熱い視線に小さく頷くと、食べかけのパスタもそのままにして、私は寝室へと連れて行かれた。
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