月に魔法をかけられて
周りを見渡して、明らかにここが自分の部屋じゃないことが分かる。

ここはいったいどこだ……?

見慣れない場所に、俺は視線をきょろきょろと動かしながら、自分の現状を理解しようと頭を働かせた。

ここは……、ホテルか………?

部屋の様子から、どうやらここはホテルの部屋のようだ。

もしかして、俺の他に誰かいるのか……?
そう思って耳を澄まして部屋の様子を窺うが、人の気配はしない。

どういうことだ……?

そうしているうちに、昨日の記憶が段々とよみがえってきた。

フジモリビューティーの社長と会食の後、
聡と飲んで……、その後……。

あっ、そういうことか……。

やっとバラバラだったパズルのピースが全てはまったように、俺はほっとしながら大きく息を吐いた。

おそらく聡が酔っぱらった俺をここに連れてきたんだろう。

聡に悪いことしたな。
あとで電話でも入れておくか……。

そう納得できたところで、俺はベッドから降りて冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出した。

キャップを開け、ゴクゴクと音を立てて喉に流し込む。

冷たい水が眠っていた身体の中に染み渡っていく。

半分以上流し込んだところで、一旦それをベッドサイドのテーブルの上に置き、バスルームへ移動した。
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