月に魔法をかけられて
勢いよく水を出しながら顔を洗い、タオルで顔を拭くと、再びベッドルームに戻る。そしてビジネスバックの中からスマホを出そうとしたところで、鞄の横に置いてあるメモが目に入った。


支払いは済ませてあります。
部屋の鍵だけフロントに返却をお願いできます
でしょうか。
よろしくお願いいたします。


はっ？　これは何だ？
どういうことだ……？


一瞬にして、先ほどの完成していたパズルが崩れ、不安が広がり始める。


いったい……誰だ？
女……か……？


俺は急いでスマホを手に取ると、通話履歴から聡の名前をタップした。何度も呼び出し音は鳴っているものの、聡は一向に出ない。


聡、なんで出ないんだ！
早く出ろよ！
おい聡、早く出てくれよ……。

イライラしながらスマホを握っていると、やっと受話器の向こうから、今起きたような聡の声が聞こえた。

「壮真かよ。朝早くからなんだよ……」

「悪い……。いや、実は昨日のことで……」

俺がそう言いかけた瞬間、聡から予想外の言葉が耳に入ってきた。
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