月に魔法をかけられて
「こちらは人参のムースでございます。上にコンソメジュレとオクラ、雲丹を添えております。コンソメジュレを混ぜ合わせながらお召し上がりくださいませ」

目の前に透明な大きな器が置かれた。

真ん中の窪んだところに、ふんわりとしたオレンジ色のムースとコンソメジュレ、輪切りにされたオクラと雲丹が添えてある。

可愛くて色鮮やかな料理に顔が綻び、歓声をあげてしまう。

「わぁっ、可愛い」

スタッフの男性が「ありがとうございます」と嬉しそうに微笑んでくれた。

「美月、食べて」

副社長も嬉しそうな顔をして目を細める。

私はスプーンを手に取り、ふわふわのオレンジ色のムースを掬うと口に入れた。

「えっ、これ人参? すっごく甘い……」

口に入れた瞬間、ムースは滑らかに溶けていき、コンソメジュレがいいアクセントになって甘さに深みを添えている。雲丹と一緒に口に入れると、これまた絶妙のハーモニーだ。

「ほんとだな。これ、人参っていわれないとわからないよな。かぼちゃかと思うよな」

副社長も笑顔で口に運んでいる。

美味しくてあっという間に完食すると、続いて次の料理が運ばれてきた。

「こちらはスモークサーモンと野菜のラヴィオリでございます。キャビアと山葵のクリームを添えておりますので、そちらをつけてお召し上がりくださいませ」

今度は四角いお皿の真ん中にスモークサーモンと野菜のラヴィオリが盛りつけられ、周りに山葵のクリームとキャビアがとても綺麗にデコレーションされている。

まるで、絵画のようなひと皿だ。

「これもすごく綺麗……。こんな盛りつけにしたら、より一層美味しく感じちゃいますよね」

「そうだよな。料理は味だけじゃなく目でも楽しむてっていうやつか」

「わぁぁ、美味しーい。私もこんな料理が作れたらな……」

あまりの美味しさに悶絶してしまう。

そんな私の姿を見て、副社長はフフッと笑みを零した。
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