月に魔法をかけられて
仕事はしっかりしているし、料理も家事も難なくこなすというのに、こういうところはほんと天然なんだよな。

こんな姿見せられたら、他の男が言い寄ってきそうで、心配で仕方ねぇよ……。

できることなら、誰にも触れさせず、俺だけのものとして過ごしたいけれど──。

そんなわけにもいかないよな……。

俺は小さく息を漏らすと、美月の髪の毛にそっと触れた。


美月を抱くようになって2ヶ月あまり。

その間、俺は落ち着くどころか日に日に激しさを増してきていた。

美月を抱いても抱いても抱き足りない。

女に対して面倒くさいと思っていた俺がこんな気持ちになるなんて……。

自分でも驚いているほどだ。

こんなに激しくしていたら、そのうち美月に拒否られるかもしれないな……。

そんな不安とも言える思いが頭をよぎるけれど、毎晩美月に触れるたびに、美月の反応がより艶めかしく深いものへと変化していくのが堪らなく愛しくて、俺はどうしてもその気持ちを抑えることができなかった。

こうして美月と一緒に朝を迎える幸せ。

こんなにも満たされた気持ちを与えてくれる美月に、俺は『人を愛する』ということを教えてもらった気がする。


昨日、親父とお袋に美月と結婚することを正式に告げた。2人とも美月のことを俺以上に歓迎し、気に入ってくれた。

美月のことだから気に入ってもらえるとは思っていたけれど、実際に親父やお袋、じいちゃんがうれしそうに美月と話している表情を見て、俺は柄にもなく胸が熱くなった。

途中、じいちゃんの話で驚くこともあったけど、パーティーで出会った知らない老人に対しても優しく接する美月のエピソードを聞いて、美月らしいよな……と微笑んでしまった。
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