月に魔法をかけられて
はぁぁ………。

溜息の吐きすぎなのか、なんだか胃の調子までおかしくなってきた。左手で胃のあたりをさすりながら、再び溜息を漏らす。

いったいどんな顔して副社長と話をしたらいいんだろう。
金曜の夜のこと聞かれたら何て説明すればよいのか。

『勝手なことをして申し訳ございませんでした』と謝ればいいのか。それとも、『何度もお声をかけたのですが、起きられなかったのでホテルの部屋にお連れしました』と言えばいいのか。

そのことを考えるだけで、身体の中にズシンと大きな錘が落ちてくる。どの回答が正しいのか、答えは全く出ていないのに、時間だけが刻々と過ぎていく。

そろそろ出ないと会社に遅刻してしまう……。

私は重い息を吐きながら椅子から立ち上がると、ショルダーバッグを持って玄関へと向かった。
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