月に魔法をかけられて
「おはようございます……」

出社してきた副社長に、顔は向けるものの視線を合わせないようにしてすぐに頭を下げる。

「ああ、おはよう……」

いつも通りの愛想のない副社長の姿に、パソコンを打っていた手が一瞬止まる。

これはいつも通りの副社長?
それとも金曜日のこと怒ってる……のかな……?

気づかれないように副社長に視線を向けつつ様子を伺っていると──。

「山内さん、10時にJGデザインと打ち合わせが入ったから、9時半にタクシー呼んでおいて」

そう言って副社長は私の顔を一度だけ見ると、すぐに視線をそらし、そのまま副社長室に入っていった。
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