月に魔法をかけられて
「はい、かしこまりました」

ガチャッと閉められたドアに向かって返事をする。

今、一瞬目は合ったけど。
あの顔、怒ってた?
雰囲気的には怒ってる感じじゃなかったよね?
どういうこと?
ホテルに連れて行ったのが私だって気づかれてないのかな?

いろいろな考えが頭の中を張り巡らす。

これから怒られたりするのかな?
今はまだ出社してきたばかりだし、もう少ししたら副社長室に呼ばれたり……する?

はぁぁ………。
また胃が痛くなってきた。
胃薬でも飲んでおこうかな……。

両手で胃をさすりながらあれこれと考えていると、パソコンのアウトルックのアラームがピコンと表示された。


『9時 金曜日の出張手配の確認』


あっ、金曜日の出張の手配の確認しとかなきゃ!
まだ9時か……。1日長いな……。
早く夕方になって仕事が終わればいいのに。
まだ9時……。
あっ、タクシー! 
タクシー頼まれたんだった。
早く手配しなきゃ!

私はタクシーの手配をするべく、慌ててデスクの上の受話器を手に取った。
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