月に魔法をかけられて
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「美月、こっち、こっちー」

待ち合わせの恵比寿駅の東口改札を出たところで、彩矢が笑顔で手を振っている。彩矢と会うのは3ヵ月ぶりだ。前回会ったのは、まだ私が秘書の仕事に慣れなくて、愚痴をこぼしていた時だった。

「彩矢、久しぶり! 待った?」

「ううん。さっき着いたとこ。予約しているお店ね、地図で見るとこっちみたい。行こ!」

彩矢はお店がある方向を指さしながら、スマホの地図を私に向ける。私たちはスマホの地図を見ながら歩き始めた。

彩矢とは大学時代からの親友で、財閥系の商社で受付業務をしている。美人で人当たりが良く、社交的な性格の彩矢にはぴったりの仕事だ。

クリッとした丸い茶色の瞳に、色っぽい唇、そして少し茶色のフレンチボブ、まるでフランス人形のように可愛らしい顔立ち。
昔からモテる彩矢だけど、当の本人は「こんな外見だからチャラい人にしか声をかけてもらえない……」って嘆いてるけれど。
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