月に魔法をかけられて
「聡さん、彼女がいらっしゃらないのでしたら彩矢はどうですか? いつも笑顔でいてくれるとってもいい子ですよ。私が保証します!」

「ちょっ、ちょっと美月、何言ってるの……」

秘書の言葉に、聡の横の彼女が顔を真っ赤に染めながら、焦っている。

「えっ? あっ、いや……」

さっきまで歯切れが良かった聡まで恥ずかしそうに視線をそらし、急におとなしくなった。

お前ら、お互い気に入ってるのが丸わかりだろ。
あー、じれったい。
とっとと早く付き合えよ。

俺は聡の顔をチラリと盗み見たあと、彼女に笑顔を向けた。

「彩矢ちゃん、もし聡に少しでも気があるんだったら、彼氏としてどうかな? こいつね、実は彩矢ちゃんのことが前から気に入ってたみたいでね。この間偶然バーで会ってやっと連絡先をゲットできたものの、どうやって誘ったらいいかってずっと俺に相談してきててさ。好きならはっきり気持ちを伝えればいいのに、ほんと昔から好きな子にはヘタレなんだ。このルックスだから女性からはよく声をかけられるんだけど、自分が好きな女性じゃないと全く興味を示さなくてね。だから浮気することもないと思うし、大切にしてくれると思う。こいつ本当にいいヤツだから。俺としては彩矢ちゃんだったら聡と合うと思うんだけど、どうかな?」

「はい。私も聡さんのこと素敵な方だと思っています」

「ほんと? ありがとう。彩矢ちゃん。よかったな聡!」

俺はヘタレすぎる聡にニヤリと視線を送った。

「壮真。ヘタレだけは余計だ」

聡は減らず口をたたきながらも、嬉しそうな顔を隠しながらグラスに残っていた白ワインを飲み干すのを俺は見逃さなかった。
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