月に魔法をかけられて
「美月ちゃんは彼氏いるの? どういう人がタイプ?」

「わ、私は特にタイプとかなくて……っていうか、あんまりそういうことに興味がなくて……」

「えっ? 興味がないの? どうして?」

秘書は困ったような顔をしながら、逆に聡に聞き返した。

「聡さんはどういう方がタイプなんですか? やっぱりモテるでしょうし、こんな風に私たちとごはんを食べてたりしたら、彼女さんが心配されるんじゃないですか?」

「俺はやっぱりいつも笑顔でいてくれる女の子がいいかな。理想はあげたらキリがないけど、一番はそれだよね。それにさ、聞いてくれる? 俺に未だに彼女がいないのは壮真のせいなんだよ。こいつがさ、いつも俺を呼び出すから、俺には彼女を見つける時間がなくてさ」

聡がわざとらしい大きな溜息をついた。

はぁ? それは単にお前がヘタレなだけだろうが……。

「何言ってんだよ。それは単にお前がヘタレなだけだろ。人のせいにすんなよ」

俺は冗談っぽく聡の顔をジロリと睨んだ。

「よく言うよ。今日だって俺が彩矢ちゃんとごはんに行こうとしてたのに、『今羽田に着いたから飯食いに行くぞ』って連絡してきたのは壮真だろ。俺のチャンスをさ、いつも壊しやがって」

「だったら2人で行けばいいのに、何も言わずに俺をここに連れてきたのはお前だろ。恐らくお前のことだから、2人だと緊張するし、案外俺から連絡があって助かったって思ってるんじゃないのか? それにチャンスがあってもいつもヘタレだから声もかけられないだろ。女にモテるわりには、聡は昔から好きな子にはヘタレだからな」

「うるせぇよ」

そんな俺と聡のやり取りを見ていた秘書が珍しく口をはさんだ。
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