月に魔法をかけられて
「はい。山内です」

「山内さん、 藤沢です。先ほどメールを送ったんだが……」

「今確認しました。送られてきた資料を添付のデータの内容に修正すればよろしいですか?」

「ああ。その資料のデータは古いデータだったらしい。新しいデータに修正してカラーで5部印刷したら、このスタジオまで持って来れるかな?」

「わかりました。今日はDスタジオですよね?」

「そうだ。申し訳ない。14時までに間に合うかな?」

「大丈夫です。すぐに修正してお持ちいたします」

私はそう言って電話を切ると、すぐに資料の修正に取りかかった。そしてカラーで5部印刷したあと、Dスタジオへと向かった。

Dスタジオに到着し、警備員に社員証を見せたあと、CM撮影が行われているであろうと思われる部屋の中へと入っていく。きょろきょろと周りを窺いながら、副社長を探していると、マーケにいた時の後輩のあゆみちゃんが私を見つけて声をかけてきた。


「あっ、美月先輩! どうしたんですか?」

「あゆみちゃん、久しぶり!」

私は懐かしさから嬉しくなって、笑顔を向けながら手を振った。

「ちょっと瞳子さん、田村くんも……。美月先輩が来られてます!」

あゆみちゃんは、近くにいたチーフの瞳子さんと田村くんを呼び、2人も私のそばにやってきた。

「あら美月ちゃん、久しぶり。今日はどうしたの? 副社長の付き添い?」

相変わらず美人で艶っぽくて素敵な瞳子さん。
私が入社した時からの憧れの女性だ。

「違うんです。副社長に資料をお渡ししなきゃいけなくて。副社長ってどこにいらっしゃいますか?」

「副社長なら塩野部長とあそこで話しているわよ。ほらっ」

瞳子さんが2人がいる方向を指さす。

「ほんとだ。ちょっと資料を渡してきます。すぐに戻ってきますので、皆さんちょっと待っててください」

私はそう3人に告げると副社長へ資料を渡しに行った。
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