月に魔法をかけられて
無事に資料を渡し終え、瞳子さんたちがいる場所へと戻る。

「改めまして、皆さんお久しぶりです!」

私は顔を綻ばせて3人に頭を下げた。

「なんだかすっかり秘書が板についちゃったわね」

嬉しそうに笑顔を向けてくれる瞳子さん。

「ほんとですよ。美月さんが異動してから俺ほんと寂しいっすよ」

そう言うのは私の2つ下の田村くん。

「私だって美月先輩が異動して寂しいんだから。田村くんだけが寂しんじゃないんだからね!」

あゆみちゃんは田村くんと同期で、いつも2人はこうして言い合っている。

私は2人ともお似合いだと思うんだけどな。
付き合っちゃえばいいのに。

微笑ましくて自然と笑みがこぼれる。そんなみんなの顔を見ていたら、つい本音が出てしまった。

「なんだかとても懐かしいです。私もマーケに戻りたいな」

「戻ってきてくださいよ。私、美月先輩と一緒にまた仕事がしたいです」

「俺も美月さんと一緒に仕事したいですよ。待ってますから」

嬉しいこと言ってくれるあゆみちゃんと田村くん。
だけど、瞳子さんだけは違ったようだ。

「私は今の秘書の仕事、美月ちゃんにとっても合ってると思うわよ。マーケもいいけど今の部署で頑張ってほしいな」

どうして……?

大好きな瞳子さんに拒絶されたような感覚に陥る。

瞳子さんは私のことあまり良く思ってないのかな?

そんな表情が私の顔に表れていたのか、瞳子さんが優しい顔をして口を開いた。
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