月に魔法をかけられて
「失礼します」

会議室のドアをノックして扉を開けると、そこには塩野部長と一緒に瞳子さんが座っていた。

「山内さん、呼び出してごめんね。入って座って」

塩野部長はにこやかな表情で私に座るように促した。
塩野部長は私が入社した時からのマーケティング部の部長で、瞳子さんはその下でチーフとして働いている。
部長はほとんど外出していることが多いので、その分瞳子さんが私たちに指示を出していた。

「山内さん、マーケの仕事はどう? 楽しい?」

塩野部長が改まって私に聞いてくる。
顔は笑顔なのにどこか様子がおかしく感じてしまう。

「はい。楽しいです」

「そう、それは良かった」

2人とも顔を見合わせて笑っている。

どうしたんだろう?
何か今までの資料にミスでもあった?

私は不安になり、恐る恐る口を開いた。

「あ、あの……、私、何かミスがありましたでしょうか?」

窺うように2人の顔を見つめる。
瞳子さんは笑顔を浮かべたまま、チラリと塩野部長の顔を見た。
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