月に魔法をかけられて
そうしている間に瞳子さんは私のそばを離れ、今度はモデルのHAYATOさんを見つけて声をかけていた。

瞳子さん、フットワーク軽すぎだし……。

「HAYATOくん、絵奈さんを待っている間、イメージを掴むために先にリハをやっておこうと思うのですがよろしいですか? 絵奈さんの代わりにうちの社員が相手役をさせていただきますので」

「わかりました。僕も先にイメージを掴んでおく方がやりやすいので助かります」

HAYATOさんがとっても爽やかな笑顔で答えている。

HAYATOさんは甘いマスクが人気のイケメンモデルで、最近はモデルと並行してドラマにも出演し、俳優としての活躍も注目されている、今イチオシの男性だ。



「美月ちゃん、こっち来てー」

瞳子さんが手招きをしながら私を呼び、その横にいるHAYATOさんも一緒に私の方を見ている。

2人に見つめられた私は行かないわけにもいかず、気が重いまま2人の元へと向かった。

「HAYATOさん、リハはうちの社員の山内がお相手をさせていただきます」

「初めまして、山内美月です。すみません。こんなこと初めてなのでご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願い致します……」

私は顔を曇らせながら深く頭を下げた。

「山内さん、リハですからそんなに緊張しないでください。僕の方こそCMのイメージが掴めるので助かります。よろしくお願いします」

そう言ってくれたHAYATOさんと視線が合う。

HAYATOさんが優しい顔をしてニコッと微笑んだ。

なんて爽やかな笑顔なんだろう。
こんな笑顔向けられたらもっと緊張してしまうじゃん。

私は顔を引き攣らせながら、なんとか笑顔を作った。
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