初恋前夜
3
次回公演の本格的な打ち合わせは明日から始まる。
部室にいるのは辛すぎるし、そのまま帰る気にもなれなかった。いったい自分がどんな顔をしているかわからないまま外なんか出歩きたくなかったわけで。
緊急避難先はすぐに思いついた。
うちの高校の体育館はかなりデカい。内部には、卓球台やバレーボールのネットなんかを管理する器具庫がひとつと、隣には演劇部の大道具や歴代の文化祭で使用してきた看板やオブジェなんかも収納されている倉庫が併設されていた。どちらも教室ひとつ分はある。
もともと存在感の薄い僕は、さらに気配を消してから体育館に入ると、そそくさと倉庫に忍び込んだ。扉を閉めると静寂が訪れた。キュッキュと響くバッシュのスキール音も練習中の掛け声も、少し遠い世界のことのようだ。
でも、そう思えたのもつかの間のこと。
うつむいたままここへ来たから、バスケ部の練習にこいつの姿がなかったことに気づかなかった。
「あれ、コウじゃん。どした?」
誰もいるはずがないと決めつけていた倉庫に楓がいた。
部室にいるのは辛すぎるし、そのまま帰る気にもなれなかった。いったい自分がどんな顔をしているかわからないまま外なんか出歩きたくなかったわけで。
緊急避難先はすぐに思いついた。
うちの高校の体育館はかなりデカい。内部には、卓球台やバレーボールのネットなんかを管理する器具庫がひとつと、隣には演劇部の大道具や歴代の文化祭で使用してきた看板やオブジェなんかも収納されている倉庫が併設されていた。どちらも教室ひとつ分はある。
もともと存在感の薄い僕は、さらに気配を消してから体育館に入ると、そそくさと倉庫に忍び込んだ。扉を閉めると静寂が訪れた。キュッキュと響くバッシュのスキール音も練習中の掛け声も、少し遠い世界のことのようだ。
でも、そう思えたのもつかの間のこと。
うつむいたままここへ来たから、バスケ部の練習にこいつの姿がなかったことに気づかなかった。
「あれ、コウじゃん。どした?」
誰もいるはずがないと決めつけていた倉庫に楓がいた。