すぐそこに夏空が【中学生日記】
 クラスの誰もが、オレと同じように夏休みを心待ちにしていることは、教室内に漂う空気で分かった。
 後ろの方の席で、悪友どもが何やら盛りあがっている。

「さっきさぁ、女子がキャッキャしてたからよぉ、なに?って聞いたらね……」
「え、何なに?」
鹿島(かじま)カンナが新しい水着買いに行くんだって」
「マジか! 試着、見たいなぁ」

 カンナはクラス随一と言っていいほどの、大きな胸の持ち主だ。
 男の悲しい(さが)で、自然とオレも聞き耳を立てていた。

「しかも……ウフ……ビキニだってょ」
「ウホウホッ!」
「なんだよ、お前。ゴリラかよ」

 オレの頭の中で、言葉のひとつひとつが映像化されてゆく。

「カンナと仲良しの佐倉奈緒(さくらなお)はさぁ、どんなの着るのかなぁ」
「アイツ最近よぉ、ニキビだぜ」
「……シャレかよ、ったく。でも文学少女の水着って、想像つかねぇー」
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