そろそろきみは、蹴られてくれ。
ピーッ
ホイッスルが鳴り響いて、みんなの視線がグラウンドへと向いた。こちらへは、向けられていない。
女子の1000メートル走出場者が、スタートラインにつく合図の音。
──橘は、わたしの頭にてのひらをおいて、
「ど? かっこよかった?」
キラキラした笑顔を見せた。
「かっこよかった……!」
変に意識をするような思考回路は、どこかにとんでいた。
本心を伝えたら、気持ちがばれる。そんな考えは、いま、ない。
本心は、伝えなければ伝わらないのだ。
熱い、彼の手が離れていく。