そろそろきみは、蹴られてくれ。
まわりの女子たちは、身体のラインがよく出る腕の上げ方とか、ハチマキを撫でる色気とかに、きゃあと黄色い悲鳴をあげている。
わたしだって、ハチマキを撫でる色気に柄にもなく騒ぎそうになったよ。
だけど。それよりも。
橘は、わたしの名前が書いてある端までを撫でた。
ああ。小さく声が漏れる。
橘は、みんながいるところでやっていく覚悟があったんだ。
──逃げていたのは、わたしだけだ。
ようやくはっきりと気がついて、くるしい。
くるしい、でも、わたし。
もう逃げたくない。