そろそろきみは、蹴られてくれ。


「じゃあ、そろそろ帰ろっか」


いつまでも教室にいたら、写真撮りたいひとの迷惑になっちゃうだろうし。


付け足された言葉も含めた花乃の2文に、どきりとする。


「……あ、えっと、わたしはこのあと、用事があって──ごめんね、今日は……」


考え考え、しどろもどろになりながらなんとか言うと、花乃は目を細めて首を傾げた。


それは、わからないってこと? それとも……なんだか意味深だ、ばれてないといいんだけど。


「そっかあ、がんばってね!」


──ほんとうに、ばれてないといいんだけどなあ……。


「それじゃ紗奈ちゃん、またね」

「またね」


手を振って、教室から見送って。


ちらり、隣の席を見る。

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