それ以外の方法を僕は知らない
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「音々、着いた」
「…うん」
「俺、本当に大丈夫だから」
「またな」と言い、踵(きびす)を返して帰っていく彼の背中を見送る。
その背中に抱き着いて「私にしなよ」って、
私が代わりになるよって、
言葉にできたら、どんなに楽だっただろうか。
彼に興味があったのも、
彼と一緒にいたいのも、
こんなに胸が苦しいのも、
ぜんぶ、私がきみに恋をしてしまったから、なんだ。
「…うぅ…、っ克真くん…、」
好きな人が、大切な人が、自分ではない誰かと幸せになることのつらさ。
それが分かってしまう自分になんて、ずっと気づかないままで良かったのに。