どうして・・
じゅうし

···美春


美春は······

ママから店の三階に住んだら?
と、言われて暮らしている。

ベッドを購入しただけ。
質素だが、美春には十分だった。

その当時は、
自分をバカにした
池谷や新、彩羽に
負けたくない
その気持ちだけだった。

池谷や新、彩羽は
美春をバカにはしていない。
ただ、関わりたくないだげ、
だったが······

美春は自分は
父のせいでこうなったと
思っていた。

自分が仕出かした事なのに·······
自分のせいで沢山の人が傷つき
沢山の人に迷惑をかけたのに·····


こんな美春だが、おバカに見えるが
有名な大学を卒業していて
頭も良く、お嬢様の品格もあり
それらを全面的にだして
客を引き付けた。


美春は、この店で働いている内に
人の裏表、汚さを間近でみてきた。

そんな美春の癒しが店にある
ピアノだった。

手が空くと
ピアノの前に座りピアノを奏でていた。
小さい頃からピアノを習っていたので
アマプロ並みに弾ける。

クラブ名
« Elegance »の中で常に
売上は、No.5に入っていた。

美春は、それより上を
望まずに長く店に身を置く事を考えた。

美春は、着のみきのままの
訳のわからない私を
雇ってくれて
住まいも提供してくれた
ママに感謝して毎日を送っていた。


美春の源氏名は、遥陽(はるひ)
美春の実母の名前を使っていた。

美春は、遥陽として7年間凄し
35歳を過ぎた。

その間に恋もした、別れもあった。
人間らしく泣く事もあった。

父親の服部 三好が保釈された
とニュースも見た。

だが、父親に
なんにも感じるものはなかった。

あの人は、どこかで一人生きて
いくのだろうとちらりと
思ったぐらいだ。

私も普通に生まれて
生きて行きたかった。

池谷の活躍も結婚もニュースで見た。
幸せそうな池谷に
こんな顔もできるんだと
改めて思った。

私が昔、遊んでいたホストが
店に、たまたま来て
私を見て騒ぎになったが
ママの旦那さんは
ここら辺りを仕切っている人で
直ぐにホスト達は、追い払われた。

私は、ママにもママの旦那さんにも
お詫びをしてお礼を言った。

その時に、私はあの時の話をした。

ママも旦那さんも当時の私に
呆れていたが·····
「遥陽、今はどうなんだ?」
と、ママの旦那さんに
「そうですね。
少し考えたらわかることなのに
ただ、お金で売った父と
お金で買った旦那に対しての
反発だったのか·····と。

でも、その代償は大きく
同級生二人に大きな傷跡を
残しました。

自分も大学時代の友人は
全て失いました。
自分のバカさ加減を
七年もかからないと
わからなかった·····なんて。」
と、言う私に
「いいんじゃねぇか。
何年かかっても
わかったんなら。
わからなくて終わるやつもいる。」
と、ママの旦那さんに言われた。

「私は、ずっと遥陽を見てきたけど
その時の遥陽が想像できない。
あなたは、しっかりした子よ。
恋愛も何度かあったみたいだけど。
揉めるわけでもなかったし····
不思議ね。

でも、何かあってこの道に
きたのだろう····とは思っていたけど
あの当時のあなたは
投げやりの部分と諦め、苛立ちとで
ささくれだっていたから···

でも·····その当時のカレには未練はないの?」
と、ママに訊かれたが
「嘘·····ばかりをついた上に
結婚も仕事もダメにさせて
両親を失うことまでさせてしまいました。

こんな私に言われたくないでしょうが、
いつか幸せになって欲しい
と、思っています。

ただ····私は、彩羽にも新にも
一度も謝罪をしていないことが
心残りとなっています。」
と、言う私を
ママとママの旦那さんが
心配そうにしていたことを
私は、知らなかった。
< 59 / 96 >

この作品をシェア

pagetop