契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「でも、どうなるかと思ったよ。ヨレシャツにGパン姿の君を見た時は…でも、プロに手にかかれば・・・見違えるんだな」

彼はようやく私に顔を向け、感慨深げな眼差しでウエディングドレス姿の私を見つめた。

「まぁ、馬子にも衣装と言ったところだが…」

褒められたかと思えば貶める俊吾さん。昔はもっと素直で優しかったはずの性格。昔の浩平兄のように意地悪な男に変貌していた。

腰を上げて、私の座るソファに腰を下ろした。

「わ、私は本気で貴方と結婚する気なんて…ありません」

「あれ、さっき神の御前で愛を誓い合ったのに…神に嘘をつくのか?」

「私はあくまで…代役で工藤亜優さんとして・・・貴方と愛を誓い合っただけです」

私は言い訳して、お茶を啜る。

「・・・俺は杏南と愛を誓い合ったつもりだ」

俊吾さんの瞳が急に真剣になり、真摯な声が鼓膜を震わせる。

「じゃ此処でもう一度、愛を誓う合うか?杏南」

俊吾さんはくぐもった声で言うと端正な顔が更に近づいて来た。

「顔が近い…」

今にもキスされそうな至近距離。

顔を俯かせようとすると後頭部に片手を回され、そのまま唇を奪われた。
誓いキスとは全く違う官能的なキス。

彼は強引に私の唇をこじ開けて舌を口内に割り入れる。

「んっ・・・あ」

息の継ぎ間もなく、軽い酸欠になり、キスの後はボーッと腑抜けた顔になってしまった。

「・・・何だよ!?その顔…杏南・・・」

彼は私の顔を見て、喉奥で笑いをかみ殺した。

「な、何よ!!?」


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