身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「ふとした時に、あー、私ひとりなんだなーって、思ったりはしちゃいますけど。今日も、水族館で写真撮影してる人たち見てちょっと思ったり……でも、これもいい思い出になるだろうなって」

「そっか……よし! わかった、俺、いいこと思いついた」

「え?」


 また話の途中でマスターが呼ばれてしまい、話はそこで中断される。

 なんだろうと思いながら、ひとりロコモコの続きを食べ始めた。

 落とされた照明とテーブルの上で揺らめくキャンドルの炎。

 雰囲気のある店内に流れるピアノの生演奏は、贅沢な時間を演出してくれる。

 二曲ほど弾き終えた晴斗さんに店内の客から拍手が上がる。

 ピアノを離れ席へと戻ってきた彼に、私もささやかな拍手を送った。


「お疲れ様です。昼間聴いた時、プロの方だと思って聴いてました」


 スツールに腰掛けた晴斗さんは、フッと薄い唇に笑みを載せる。


「プロはこんなもんじゃないから。趣味の延長みたいなもん」

「そうですか? 私、子どもの頃ピアノ少し習ったことがあったんですけど、何も弾けないですからね。やっぱり、センスとかもあるんだと思いますけど」

「そういうもん?」


 そんな話をしていると、「お疲れー」とマスターが戻ってくる。


「まだ弾かせてもらうけど」

「おう、頼むよ」


 晴斗さんとやり取りを交わし、私の食べ終えたプレートを「下げるね」と手に取った。

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