Pride one
 優月はふと思った。考えてみたら、神長のように心の機微を理解する特異な男や、坂巻のように人のために自分を犠牲にできる優しさを持った男でさえ、未だに運命の相手にめぐり合えないのだ。自分に相手がいないのも当然であり、焦ることなど何もないのかもしれない、と。

 テーブルの上で、優月のスマートフォンが震えた。噂をすれば、美波からのメッセージだ。

『今日から改装スタート! 会いにきて』
 そんな見出しとともに、全てがひっくり返った酷い有様の部屋の中央で、雑巾を掴んだ手を高々と振り上げる、自由の女神像さながらの美波の写真が添付されている。

「もう、完全にこいつの天下じゃん」
 優月は声を出して笑った。

「様子を窺いに行くまでもなく、自由に生きてるみたいだな」
 回ってきたスマートフォンを受け取って、神長は口元を緩める。

「もう改装始まってるってことは、結構早く準備が終わるかもしれないよね」
 坂巻の心はすでに沖縄に飛んでいるようだった。
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