【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
「小林さま、なにかございましたら、ご遠慮なく当行にご相談ください。
先程、お渡しした名刺の連絡先までお電話くださいましたら、すぐに対応いたしますので」
——あ、でも……中谷さんをはじめとするここの銀行の人には(あたりまえだけど)知られているんだっけ。
『ひとりでも人に話』したらアウトってことは、友達にだって相談できないんだわ。
(まぁ、普通にOLやってる学生時代の友人たちと接客業で平日休みのあたしとでは生活リズムが合わなくなって、今ではとんと疎遠になってはいるんだけれども……)
なのにこの先、たったひとりで「対処」できるんだろうか……?
そんな自信なんて、まるでなかった。
「当せん証明書の発行の申請はしておきますので、お渡しは後日ということになります。
……小林さま、私の方からは以上ですが、なにかご質問等ございますか?」
中谷氏が書類をチェックしながら尋ねる。
その左手の薬指には、銀色に光るシンプルな指輪があった。
——奥さん、いるんだ。
何歳くらいの人なんだろうか?
落ち着いた濃紺のスーツからはよくわからない。
宝くじ部の「部長さん」なのだから、もしかしたら四十歳を越えているかもしれない。
そういえば、「やさしいお父さん」に見えなくもない。
「いいえ、なにもありません。
あの……もしも、困ったことが出てきましたら、どうぞよろしくお願いします」
あたしは職場で仕込まれたお辞儀をした。