戦国占姫
第二十話 社長の女

 一週間後、無事退院。
 ここまで入院するとは思わなかった。
 私は大学に向かった。
 彼等にキスのお礼を言う。それだけのために大学へ行くのは気が引けるが、沸々と沸き上がる怒りを抑えられない。
 (教授、ごめんなさい)

 大学の門には報道陣が私を待ち受けていた。
 悲劇の占い師からコメントを取るためだけに集まっていた。
 「おい! 彼女じゃないか?」
 誰かが私に気がついた途端、一斉に囲まれた。
 (ち、ちょっと・・・)
 報道陣に揉みくちゃにされた。
 「姫ーっ! こっちよ。走れーっ!」
 ナオミが叫んでいる。その手には木刀が握りしめられていた。報道陣の隙間を探して、私はナオミの方へ逃げた。ナオミが木刀を構え、報道陣を威嚇する。
 「こっちだ! 速く走れーっ!」
 リーチ、ハンジ、カンゾーが待ち受けていた。
 「ありがとう。助けて・・・」
 「あぁ、俺達に任せろ!」
 私は校内へ入って、ひと息ついた。

 「姫子、朝から大変だったわね」
 「ナオミ。助けてくれてありがとう。リーチ達もありがとう」
 「そんなの気にしなくっていいわよ! ねぇ」
 「そうだぞ。気にするな! 悪いのは向こうだからな。報道陣の対処は大学の方でするみたいだから、もう安心だ」
 いつもの五人で食堂に集まり、昼食を食べていた。
 私は改めて彼等の顔をじろじろと見た。
 「姫子。どうしたんだ?」
 リーチが不思議そうな顔をしていた。
 「な、何でもないわよ!」
 私は慌ててお茶を飲んで、咳き込んだ。
 「・・・お茶は慌てて飲む物じゃないよ。ゆっくり飲まないとね」
 (ヤッパリ、リキュールだ)
 私はあの話を思い出していた。
 きっと彼等の魂は異世界を越えて、私の側にいる。
 そう確信した。私の大切な仲間。

 異世界を旅して分かったことがある。
 私は占いの本質が分かっていなかった。人間の心は弱い。恐竜のような目を持つ者も絶対的な権力者も心の奥では何かに怯えている。
 弱き心をくみ取り、救うべくアドバイスをする。
 「占いとは何か?」
 その本質に触れた気がする。私は、もう一段階上の占い師になれた・・・ような気がしていた。
 占いの神様が私に試練を与えたのだと今なら理解できる。

 私はあることを計画していた。
 (喜んでくれるかな?)
 皆には自分の生き方がある。無理強いはしないつもり。私はこの五人で会社を作りたい。
 すでに会社名は決めてある。
 「センキ」
 これが私の会社だ。資本は問題ない。今まで蓄えた貯金がある。後は人材と何をするかだけ・・・。

 一年後、私はエンターテイメント会社社長となっていた。学生の身分で社長。まだ小さな会社だが、いつかきっと一流企業にしてみせる。
 利一さん、半二さん、官三さんが役員として会社を切り盛りしてくれている。直美は役員兼秘書として私の側にいる。
 「この世界に笑顔を届けたい」
 この私の想いを受け取ってもらえるかしら・・・。
 ついでに、貴女の運勢を見てあげましょう。
 ・・・貴女の運勢は・・・。


 ― 完 ―
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