ずっと、そばに

退院するときちゃんと来るって約束したから、

翔馬先生には申し訳ない。


だけど、どうしても出る気になれなくて電話が切れるのを待った。



私、翔馬先生との約束ですら守ってない…


私のこと真剣に考えてくれたのに…



優しい翔馬先生でも怒っていると思うし、

もう、合わせる顔がない。


翔馬先生にも、真緒さんにも。



それなのに…次は翔馬先生からメッセージが来る。


不在着信を知らせる通知の下に。

今、気づいたけど、私から翔馬先生に電話番号は教えてないから、Lineの通話機能で電話してくれたみたい


『陽菜ちゃん、どこにいるの?
今日の検診、陽菜ちゃんが来ないから心配だよ。もし、身体とか心が辛いなら俺が迎えに行こうと思うんだけど…だから場所教えて 』



責める言葉が1つもない


翔馬先生の優しさがぎゅっと詰まった文。



…助けてほしい。

でも、今は、病院に行くことも、居場所を教えることもできない。


会ってしまえば、優しさにすがって甘えてしまうから…


悪い子だから、困らせることしかできないから。

優しくされる資格なんてない。

私なんて邪魔にしかならない…






なのに完全無視はできなくて

Lineを開いて返信内容を考える。



『翔馬先生、ありがとう…
でも、病院にはもう行かない 』


送信するかしばらく悩んだけど、震えた指で送信ボタンを押した。



これで、私を助けようとしてくれる人はもういない…


これでよかったんだ。


そう思うのに、私の頬は濡れている。




< 108 / 171 >

この作品をシェア

pagetop