救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
本日めでたく十数人いるあやめの受け持ち患者のうちの一人が退院する。

このベリーヒルズビレッジの創設者のひ孫であり、その巨大ビレッジの中に建てられたニューベリーヒルズという世界的にも有名なオフィスビルを取り仕切る社長の息子。

その名も

聖川光治、35歳。

ニューベリーヒルズビル内に設置されたベリーヒルズビレッジ運営本部の専務取締役を勤めているそうだ。

患者として初めて彼を見かけたときには、イケメンエリート商社マン(仮)とあやめは勝手に命名していたが、あながち間違いでもなかったらしい。

だが、そんなキラキラした患者家族背景も、あやめにとっては、問診における一情報にほかならない。

情報は情報であり、それ以上でも以下でもなかった。

プレショック状態の彼を無理やり病院に運んで検査と治療を受けさせた。

ちょっと強引だったかもしれないが、あやめに後悔は一つもない。

プライドとか仕事への責任感とか、腹の足しにならないものへの執着は命に代えられるものではない。

そんなあやめの信念はどこまでも気高く、誇りに満ちて彼女を自由にさせていた。

あやめは、電子カルテに光治の退院サマリーをまとめながらフーッとため息をついた。
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