救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
一通り会話を楽しみあやめの関心が周囲に向きはじめた頃、ホストである粟花落夫妻の周囲には、いつの間にか複数の招待客達が挨拶をしようと列をなしていた。

゛これ以上、ホスト夫妻を独り占めにしているわけにいかないわね゛

あやめがそう考えて動こうとした矢先、

「お忙しいところ我々に貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。家元のお弟子さん達のお手前を頂戴してまいります」

と、光治はスマートにあやめの肩を引き寄せ、他の招待客らにホストとの会話の機会を譲ってくれた。

「ああ、こちらこそ君たちの来場に感謝する。光治は存分にあやめっちとの甘いひとときを満喫してくれたまえ」

茶化す創生に、ほんの少しだけ゛不本意だ゛とばかりにあやめの顔が歪む。

しかし、こんな大勢の招待客の前で、聖川専務に恥をかかせるわけにはいかない。

「お加減が悪い方がいらしたら私に声をかけて下さいね。お二人も夜とはいえまたまだ暑いから気をつけて」

と、労いの言葉を残してあやめは爽やかにその場を離れて行った。

「ありがとう」

そう微笑み返すホスト夫妻は、お似合いなのにどこか初々しい友人カップル(とその執事)の背中を、興味半分、応援半分といった表情で見送った。
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