救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「えっ?今なんて言いました?」
「島の診療所に、手術室と心臓カテーテル室、透析室、五床の入院施設を作ることになった」
昨夜の結婚式二次会と称した飲み会で、博志社長は卓次郎と昭次郎にそんな提案を投げ掛けたという。
「あやめが乗ってきた最新型ヘリもなんとこの島に寄付して下さるという。採用した米軍出身の操縦士は根っからのダイビング好きでこの島に永住するつもりでやって来たらしいんだ」
昭次郎によると、聖川ホールディングスは、あやめと光治の結婚をきっかけにしてN島の観光開発に乗り出すらしいのだ。
そのためには医療の充実は必須、交通手段の確立も重要課題。
これまでのN島は決して鎖国をしようとしていたわけではない。
ただ話題となる観光スポットや本土からの移動手段が限られており、胸を張って呼び込みをかけるほどの実力を持ち合わせていなかっただけなのである。
「スキューバダイビングスポット近くにある今は使われていない村のコテージを先日リニューアルしてペンション風に改装致しました。島の岬に伝わる恋愛成就の伝説も活用すれば、立派なツアーメニューとして成立致します」
田中の言葉に、卓次郎と昭次郎も大きく頷く。
「そんなに上手くいくはずないよ。採算が取れなかったらどうするの?」
あやめの心配を見越してか光治が笑顔でスマホを差し出す。
「?・・・!」
差し出されたスマホの画面には、衝撃のニュースが一面を飾っていた。
『聖川ホールディングスの堅物御曹司、遂に結婚。お相手はN島出身の凄腕美人女医、杜若あやめさん・・・』
普通なら素人のあやめの名前は伏せられるべきではないか!
いや、突っ込むべきところは゛なぜ結婚の事実がこんなにも早く世間に漏れているのか゛というところなのだが、驚くべきことに、そこにはあやめと光治の縁をとりもった(?)島の岬の伝説や竜神さまの呪いとご加護についても詳細にかかれていた。
あやめは疑いの目で田中執事を見る。
だが、田中は誤解だと言うように首を振りながら、
「どうやらパパラッチがこの島に紛れ込んでいたようですね。ですがこの記事をきっかけに村の役場にはひっきりなしの問い合わせが続いています。考えようによっては勝機になるかと」
゛いや、あんたがパパラッチだろ゛
とあやめは確信していた。
「聖川は、息子の嫁の実家の不利益になるようなことは絶対にしない。後のことは安心して我々に任せてくれたまえ。あやめちゃんには光治のことを頼みたい」
義父となった博志の言葉に、あやめは全てを諦め、
「わかりました。こちらこそよろしくお願いします」
とだけ答えた。
「言質はとった。それでは行こうね」
あやめのその言葉を待っていたかのように光治は彼女の手を取り立ち上がる。
「えっ?どこに行くの?まだ夏期休暇は6日残っているんだけど」
「島の診療所の未来は明るい。だからあやめがこの地に縛りつけられる理由はもうなくなったんだ。そうですよね?お義父さん、お祖父さん」
大きく頷く父と祖父にあやめは何がなんだかわからずに動揺する。
「さあ、帰ろう。僕達の新居に」
「新居?」
「そうだよ。色々揃えたいものもある。あやめは僕についてきて」
グイグイと引っ張っていく光治と戸惑うあやめに、心底嬉しそうに微笑んで手を振る卓次郎と祖父母。
「ひ孫ができたら見せに来い」
「これからはいつでも行き来できるわね」
呑気な祖父母の声に見送られ、気付いたらあやめは昨日舞い降りた村営グランドに連れていかれていた。
「島の診療所に、手術室と心臓カテーテル室、透析室、五床の入院施設を作ることになった」
昨夜の結婚式二次会と称した飲み会で、博志社長は卓次郎と昭次郎にそんな提案を投げ掛けたという。
「あやめが乗ってきた最新型ヘリもなんとこの島に寄付して下さるという。採用した米軍出身の操縦士は根っからのダイビング好きでこの島に永住するつもりでやって来たらしいんだ」
昭次郎によると、聖川ホールディングスは、あやめと光治の結婚をきっかけにしてN島の観光開発に乗り出すらしいのだ。
そのためには医療の充実は必須、交通手段の確立も重要課題。
これまでのN島は決して鎖国をしようとしていたわけではない。
ただ話題となる観光スポットや本土からの移動手段が限られており、胸を張って呼び込みをかけるほどの実力を持ち合わせていなかっただけなのである。
「スキューバダイビングスポット近くにある今は使われていない村のコテージを先日リニューアルしてペンション風に改装致しました。島の岬に伝わる恋愛成就の伝説も活用すれば、立派なツアーメニューとして成立致します」
田中の言葉に、卓次郎と昭次郎も大きく頷く。
「そんなに上手くいくはずないよ。採算が取れなかったらどうするの?」
あやめの心配を見越してか光治が笑顔でスマホを差し出す。
「?・・・!」
差し出されたスマホの画面には、衝撃のニュースが一面を飾っていた。
『聖川ホールディングスの堅物御曹司、遂に結婚。お相手はN島出身の凄腕美人女医、杜若あやめさん・・・』
普通なら素人のあやめの名前は伏せられるべきではないか!
いや、突っ込むべきところは゛なぜ結婚の事実がこんなにも早く世間に漏れているのか゛というところなのだが、驚くべきことに、そこにはあやめと光治の縁をとりもった(?)島の岬の伝説や竜神さまの呪いとご加護についても詳細にかかれていた。
あやめは疑いの目で田中執事を見る。
だが、田中は誤解だと言うように首を振りながら、
「どうやらパパラッチがこの島に紛れ込んでいたようですね。ですがこの記事をきっかけに村の役場にはひっきりなしの問い合わせが続いています。考えようによっては勝機になるかと」
゛いや、あんたがパパラッチだろ゛
とあやめは確信していた。
「聖川は、息子の嫁の実家の不利益になるようなことは絶対にしない。後のことは安心して我々に任せてくれたまえ。あやめちゃんには光治のことを頼みたい」
義父となった博志の言葉に、あやめは全てを諦め、
「わかりました。こちらこそよろしくお願いします」
とだけ答えた。
「言質はとった。それでは行こうね」
あやめのその言葉を待っていたかのように光治は彼女の手を取り立ち上がる。
「えっ?どこに行くの?まだ夏期休暇は6日残っているんだけど」
「島の診療所の未来は明るい。だからあやめがこの地に縛りつけられる理由はもうなくなったんだ。そうですよね?お義父さん、お祖父さん」
大きく頷く父と祖父にあやめは何がなんだかわからずに動揺する。
「さあ、帰ろう。僕達の新居に」
「新居?」
「そうだよ。色々揃えたいものもある。あやめは僕についてきて」
グイグイと引っ張っていく光治と戸惑うあやめに、心底嬉しそうに微笑んで手を振る卓次郎と祖父母。
「ひ孫ができたら見せに来い」
「これからはいつでも行き来できるわね」
呑気な祖父母の声に見送られ、気付いたらあやめは昨日舞い降りた村営グランドに連れていかれていた。