今日も、私は瀬那先生を誘惑します。

「ん?」



私からの視線に気づいた瀬那先生は、不思議そうに私のことを見てきた。



「間接キス、だなって思って」

「……あぁ、気づかなかった」



気づかなかったんかーい……!



こっちは1人でソワソワして、大好きなミルクティーの味もまったくしなかったのに。



「悪い。嫌だったよな」



瀬那先生は申し訳なさそうにそう言うと、さっきまで美味しそうに飲んでたコーヒーを下げてしまった。



「……嫌じゃないです」

「ん?」

「別に嫌じゃないから、飲んでくださいっ」

「……わかった。じゃあ、飲むな」



横目で再び瀬那先生がコーヒーを飲んでいることを確認する。



「先生、ありがとう」

「このことは誰にも言うなよ?さすがにみんなの分まで奢れるほど金持ってないからな」

「はい」

「でも、なんで私がコーヒー苦手なの分かったんですか?」

「思いっきり嫌そうな顔して飲んでたから」



私の表情をちゃんと見てくれてたんだ……そう思うと、さらに胸の奥が温かくなった気がした……。


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