気付いたらゴーストでした。
 外では滅多として目が合わないので、潤んだ瞳を見て少なからず動揺した。

「駿くんだと……。いいね?」

 花純さんは一筋の涙をこぼし、小さく微笑んだ。

 *

 再び病室前まで歩き、扉と対面する。

 今現在、背中から白い糸は出現したものの、リードは伸びる一方で限界には達していない。

 長さはかなりのものになっているはずだが、糸の仕組みはやはり分からない。

 405号室は個室で、(すめらぎ) 静子(しずこ)と書いたネームプレートがはめ込まれていた。

 皇、静子さん。

 この人が僕のお母さんだとしたら、絶対に全てを思い出す。

 そうしたら成仏という流れになるのかもしれないけど、僕は無事に花純さんから離れられる。

 これ以上、迷惑をかける事もなくなる。

 フワフワと浮き上がる足下を見つめ、複雑な気持ちになった。

 花純さんに憑いていたのはたった三日だけど、彼女が今この場に居ないのをひどく寂しく感じた。

 もうあの奇人変人ぶりを見れないのも、ちょっとだけ名残惜しい。

『………』

 ほんのちょっとだけ……、だけど。
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