先輩、届きますか?
凛先輩という人
「眠い…」

昨日は全然寝れなかった。

あのことが頭から離れなくて…

昨日は恥ずかしさでいっぱいだったが、今日は違う。

力強い腕。

さらさらした髪。

そして、桜の下でみた時と同じ、綺麗な瞳。

胸が高鳴っているのがわかる。

「名前、知りたいな、」

鈴音はぽつりとつぶやいた。

「じゃあ、聞きに行く?」

横から美里の明るい声がする。

「え?むりむりむり」

鈴音は全力で首を振った。

「なんでー?」

「いや、普通に考えて無理だよ。全然仲良くもないし。」

「仲良くなるために聞きにいくんでしょー??」

「いや、向こうも急に来られたら困るよ。普通に無理だよ」

鈴音が弱弱しく言う。

何言ってんの!、と美里が言った。

「困らせればいいじゃん。普通?無理だよ。普通にしてたら恋は叶えられないよ。
ましてや、ゼロからのスタートじゃん?無理やりでも知ってもらわなきゃいつまでたっても始まらないよ!」

美里の言葉には説得力があった。

美里は恋をしているのだろうか。

「鈴音、もしかして、はじめて?」

「え?何が?」

「恋だよ、恋」

鈴音は小さくうなずく。

(これが、恋…)

改めて認識すると、なんだか体温が上がっていく気がした。

「わ!鈴音、真っ赤。かわいい。」

美里が微笑む。鈴音は顔を両手でおおった。
< 5 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop