浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~

「最近のDNAは、より正確に判断してくれる。
会いたかったよ……俺の可愛い弟君」

 赤羽は、そう言いながら俺を抱き締めてきた。
ゾクッと背筋が凍る感覚がした。
 そのぬくもりさえ気持ち悪いとも思った。

「や、やめろ!!」

 力が入らない身体を使い否定した。
施設に居た頃は、自分の捨てた両親に会いたかった。
 兄弟だって居たらどんなに良かったかと思ったことは、
何度もあったけど、これほど嫌だと思ったのは、
生まれて初めてだった。

 違う。俺が欲しかった兄弟は、こんな奴じゃない。
赤羽と同じ血なんて……俺が引いている訳がない。
 きっと罠だ。陥れるための……。
 必死に頭の中で自分に言い聞かした。しかし
赤羽は、そんな俺を見ながらクスクスと笑ってきた。

「どんなに否定しても無駄だよ。
 君の中に赤羽の血がより濃く受け継いでいる。
そのことは、神崎君だって知っているはずだよ?」

「か、神崎さんが……!?」

 「あぁ、あの情報屋のリカコが居るのに
知らない方がおかしいだろ?
 君の個人情報は、全て神崎君が把握している。
 僕と同じ憎き血が流れているのにも関わらず
君とバディを組んだのは、何故だろうね?
 それは、簡単だよ。1つは、君が
いずれ俺に接触して悪さしないように監視すること。
 そして赤薔薇会の復讐に燃えてる彼は、君共々
赤薔薇会を消滅の機会を狙っているか……」

 神崎さんが……俺を監視している!?
しかも消滅の機会って……。
 違うと言いたいのに言葉が出てこない。
聞きたくないのに赤羽の言葉が俺の心を揺さぶる。

 「考えてみろよ?平凡に生きてきた君が、何故
危険なことまでして積極的にやらせるのか。
 そこまでの知識も機転が利く頭脳も身体能力もないのに
普通の神経なら、そんなことを素人にやらせないし
 あんな時給のいいバイトで呼び込まない。
君もおかしいと思ったことはないのかい?」

 た、確かに。時給がいいけど、こんなに
危ないことをさせられるなんて夢にも思わなかった。
 このバイトをしてからだ。命の危機を感じたのは……。

 えっ……じゃあ神崎さんは、わざと
俺にやらせているのか?
 危なくなってもいいと思っている相手だから……。
 頭が赤羽の言うことを真に受けたらダメだと思うのに
その言葉が……俺を真っ暗な闇に突き落としていく。

 「“いい子”だ……駆。君は、神崎に騙されている。
彼は、お前のことなんてこれっぽっちも心配していない。
 可哀想に……兄である僕が君の唯一の味方になってあげる」

「…………」

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