切ないほど、愛おしい
勤務に戻ってから半月がたち完全に通常運転に戻った私は、また仕事に追われるようになった。

もちろん、同じ失敗を繰り返すことがないように体調も気にしながら薬も受診もサボることなく仕事に励んでいた。
そんな時、

「長谷川先生って、当直は無理なんだよね?」
今日当直予定の先輩ドクターが、意味ありげに私を見ている。

確かに、山神先生の指示で当直のシフトには入っていない。
でも、患者の様態によっては日付が変わるまで勤務することもあるし、突発的に人手がいるようなときは過去何度か当直に入ったこともある。

「どうかしたんですか?」
質問に答える前に聞いてみた。

「うん。子供と嫁が一緒に風邪をひいて、熱を出したらしくてさ」

なるほど。それは大変。
そもそもここのスタッフはみんな私の事情を知っているわけで、それでも言ってくるってことはそうとう切羽詰まった事情。
要は、当直を変わって欲しいんだ。

「いいですよ、変わりましょうか?」

今日の当直はベテランスタッフが揃っているし、入院患者も多くないからそんなに忙しくはならないはず。
それに、私の体調も悪くは無いし。

「いいの?」
「ええ」

山上先生の診断書だって、「長時間の勤務を避けること」とあるだけで当直がダメと書いてあるわけではないし。

部長には事後報告で大丈夫だろう。そう思った。
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