切ないほど、愛おしい
「幸せにするなんて無責任な約束はしない。でも、一生大切にする。どんなことがあっても、全力で守る。だから、」

そこまで言って、徹の言葉が止まった。

私は落としていた視線を上げて、徹を見た。


「僕と結婚してください」

「え、えええ、だって」

すごくうれしいのに、素直に「はい」とは言えない私。


「ちなみに、イエス以外の返事は受け付けない。俺はもう、乃恵を手放す気はない」

「そんな横暴な」

一応文句を口にしてみたけれど、私の気持ちを知っている徹にごまかしはきかない。
それに、私も彼の側を離れるつもりはない。

「あきらめて俺と一緒にいなさい。俺たちはきっと、運命なんだ。いいね?」

はあぁー。
徹って、こんなセリフを言う人だっけ?

自分でもわかるくらい顔を赤くした私は、ただうなずくだけの返事を返した。


恋愛なんてしないと言い続けてきたくせに徹に恋をした私が言えた義理ではないけれど、徹もかなりキャラが崩壊してきている。
きっと普段の徹は無口で硬派で、『運命だ』なんてセリフで女の子を口説く人ではないはず。
そう思うと、今徹に愛されていることがうれしくて、

「ずっと、一緒にいようね」
私から唇を重ねた。
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