切ないほど、愛おしい
「徹が俺のことをかってくれているのは本当にありがたいと思うんだ。でも、個人的な思いが入っていないか?」

お兄ちゃんは、徹さんが友人の会社だからって理由で契約話を持ってきたんじゃないかと思っているようだ。

「安心しろ。これは鈴森商事からの正式なオファーだ。だからって、難しく考える必要はないぞ。これからも俺の力になって欲しい、それだけだ」

私みたいな素人が言うのも変だけれど、徹さんの言葉には説得力がある。
聞く人を黙らせ納得させてしまうような不思議な力が。
素敵だな。
静かに淡々と話す徹さんを見て、素直にそう感じた。
お兄ちゃんにこんな友達がいたなんて、びっくり。

その時、
ブー、ブー、ブー。
携帯の着信。

「ちょっとごめん」
画面で相手を確認して、お兄ちゃんが席を立った。


「相変わらず忙しそう」

テーブルの上の料理をつまみながら、逃げていくお兄ちゃんの背中を見た。

「まあ、あの陣だからな。止まったら死ぬだろ」

え?

徹さんは普通に話しているけれど、私は首を傾げてしまった。
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