切ないほど、愛おしい
買ってきた布団にシーツを掛け、床に直接敷いた。

新しい布団も枕も気持ちいいけれど、やはり慣れなくてなかなか寝付けない。
なぜだろう、昨日の布団の方がよく眠れたな。

しばらく頑張って布団に入ってみたけれど、結局寝付けなくて起き出してしまった。


ハアー、困ったなあ。

普段使われた様子のない部屋には家具もなくて、生活感がない分少し寂しい。
私はベランダに続く大きな窓の側まで行き、膝を抱えて座り込んだ。

目の前には都会の綺麗な夜景が広がる。
普段の自分には縁のない高層マンションからの景色に、ボーッと見入った。

徹さんはお兄ちゃんの友達だけれど、やっぱり住む世界違う。
何で私、ついて来ちゃったんだろう?
それに、
何で徹さんは、私に優しくするんだろう?

お兄ちゃんの妹だから?
昨日も泊めたから?

じゃあ、いつから私がお兄ちゃんの妹だと知っていたんだろう?

聞きたいのに、今さら聞けない。
随分迷惑を掛けてしまったし。

ピコン。

ん?

徹さんからのメールだ。

『明日の朝は1度会社に寄りたいんだが、どうする?一緒出てもいいし、待っててくれたら1時間くらいで戻るが?』
『一緒に出ます。寝てたら起こして』

わりと寝起きは良い方だから大丈夫だと思うけれど、一応ね。

『わかった。旨い朝飯おごってやる』
『うん』
思わずスタンプを押してしまった。

よし、もう一度布団に入ろう。
明日は忙しそう。
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